今回は、予想どおりに不合理の解説をします。
読んだ感想
これまでに、ダン・アリエリー先生の本はまとめてきましたが、これで一旦最後になります。
ダン・アリエリー先生の最初の本です。
なのに最後にまとめるんかい。
すみません。
最新のものから順番に読んだので、このような順番になってしまいました。
この本で思ったことは、のちに出版される本の土台になっていることです。
例えば、「ずるとごまかしの経済学」にもある「ずる」に関することは13章以降で触れられています。
「無料よりやすいものもある」で解説されている、「無料」に潜む力に関しては5章で。
さらっと行動経済学を読んでみようかなとこれだけでも読むと楽しめると思います。
一方で、行動経済学をめちゃ、勉強したい人は最新のものから読んでも良いと思います。
先に読むことで、この本はとても早く読み終えることができます。
「これ、〇〇にも書いてあったな」と理解を早くすることができるからです。
ぜひ他の本も読んでみてください。
相対性の真相
早速、あなたに質問します。
・エコノミスト・ドット・コムの購読 ー 59USドル
・印刷版の購読 ー 125USドル
・印刷版およびウェブ版のセット購読 ー 125USドル
全て、1年間利用すことができます。
さて、どれを選びますか?
多くの人が3つ目の
・印刷版およびウェブ版のセット購読 ー 125USドル
を選ぶと思います。
・印刷版の購読 ー 125USドル
これを選ぶ人はまずいないでしょう。
なので、印刷版のみを外してみましょう。
・エコノミスト・ドット・コムの購読 ー 59USドル
・印刷版およびウェブ版のセット購読 ー 125USドル
この二つだったらどうでしょう。
エコノミスト・ドット・コムの購読 を選ぶ人が増えたのではないでしょうか?
MITで行われた研究によると、選択肢が3つの時は
・WEB版 ー 16人
・印刷版 ー 0人
・WEB版 + 印刷版版 ー 84人
でした。
選択肢を減らすと
・WEB版 ー 68人
・WEB版 + 印刷版版 ー 32人
になりました。
人間はものごとを絶対的な基準で決めることはまずありません。
他のものと相対的な優劣に着目して、そこから価値を判断します。
上記の例でいくと、印刷版とWEB版どっちが良いかはわかりません。
しかし、印刷版のみの「おとり」があることで、どれがお得なのかが明確になります。
心理学では「おとり効果」と言います。
面白いのが見た目でもおこることです。
例えば、福山雅治さんと平野紫耀さんどっちがかっこいいですかと聞かれたら、どっちもかっこいいから選べないでしょう。
ですが、ここにおとりの選択肢が増えたらどうでしょうか。
福山雅治さんと芸人のみっちーさん(福山さんに似ているお笑い芸人さん)と平野紫耀さんの内誰がかっこいいですかと聞かれたら、福山雅治さんと答える人が増えるでしょう。
それは、みっちーさんと福山さんが比較しやすく、福山さんの方がみっちーさんよりかっこいいと思うからです。
みっちーさんすみません。
MITでダン・アリエリー先生が行った実験では、2種類の写真を用意しました。
それぞれをAとBだとしましょう。
AとBに手を加えて、不細工なバージョンを作ります。
これらをA primeとB primeとしましょう。
作った画像を2つのグループに分けます。
1:A, A prime(Aの劣化版), B
2:B, B prime(Bの劣化版), B
この結果、1グループではAを75%、2グループではBを75%の人が選びました。
人は比較しやすいものを探して、良いと思う方を選ぶのです。
筆者は合コンでは自分に似ていて、少し見た目の劣る人を連れていくと選ばれやすくなると冗談混じりに言っています。
面白いですね。
市場規範と社会規範
この世界は2種類の世界がある。
社会規範が優勢な世界と市場規範が優勢な世界だ。
社会規範とは
友人からの頼まれごとやボランティアなどです。人間関係や共同体などが含まれます。
市場規範とは
お金が絡むやり取り、独立主義、独創性などが含まれます。
これらの世界は別々であればうまくいきます。
しかし、混ぜてしまうと、問題が起きます。
塩素系漂白剤と酸素系漂白剤です。
混ぜるな危険です。
例えば、友人に引っ越しのお手伝いを頼まれたとしましょう。
「お願いだから手伝ってくれない?」と友人から言われたら、「ええよ」と多くの人が言うでしょう。
一方で、「3000円あげるから、引っ越し手伝ってほしんだけど」と言われたらどうでしょうか?
「3000円かよ、バイトした方がマシやんけ」となるのではないでしょうか。
お金を貰わない時より断る人は多くなるでしょう。
社会規範の中に市場規範が持ち込まれると、社会規範は消えてしまいます。
イスラエルの託児所で子供の迎えに遅れてくる親に罰金を課すのが有効かどうかを調査した結果を見ると驚きます。
結果は、罰金はうまく機能しないどころか長期的に悪影響を及ぼすことがわかったからです。
罰金がない時は社会規範が適応され、遅刻したときの罪悪感から、今度は遅刻しないようにしようという気にさせていました。
しかし、市場規範が入り込むと、罰金を払えばいいのだから遅刻しても問題ないと、遅刻する親が増えたのです。
数週間後、罰金制度をやめました。
市場規範から社会規範に戻ったのです。
これで遅刻は減ったか?
いや、遅刻する親はむしろ増えたのです。
罰金がなくなったのですから当然です。
ここからわかることは、市場規範と社会規範がぶつかり合うと、社会規範はどこかへ消え去ってしまうのです。
そして社会規範に戻すのは非常に難しいのです。
よく、お金が全てじゃないとよく聞くと思います。
私は、社会規範が適応されているところにお金を持ち込むべきではないという意味だと思います。
確かに、お金を人間関係に持ち込むと、亀裂が入ることがよくあります。
お金の切れ目が、縁の切れ目だというように。
市場規範を持ち込こまなければ、切れなかった縁はいくらでもあるでしょう。
だからといって、市場規範が必要ないかというとそうではありません。
市場規範があるから成り立っているものもたくさんあります。
会社と従業員、企業とユーザーのように市場規範だからこそ成り立っているのもあります。
大事なのは、社会規範にお金を持ち込まないこと。
そして、社会規範の威力を認識していること。
アリエリーとジェームス・ヘイマンは労働生産性をはかる事件を3つのグループに分けて行いました。
・5ドルもらったグループ
・50セント or 10セントもらったグループ
・社会規範を適応したグループ
この結果、一番多かったのは社会規範を適応したグループでした。
僅差で、5ドルもらったグループ
2番目のグループは圧倒的に少ない量でした。
社会規範の威力はすごいのです。
ロバート・チャルディーニ先生が社会的証明の原理を入れているのも納得です。
選択の自由の損失
私たちは選択の自由がなくなるのをひどく嫌います。
希少性の原理があるのもこの理由でしょう。
ですが、選択の自由を失いたくないあまり、我々は不合理な選択をしている可能性があります。
アリエリーの助手のキムは、コンピュータに3つの扉を表示し、クリックするたびにある金額が実験協力者のものになるプログラムを作り実験を行いました。
・クリックできる回数は100回
・扉の色ごとに賞金の範囲が決まっている。
例えば、赤は1〜5ドル、黄色は3〜8ドルのように
・部屋を変えると、1クリックが余分に消耗する
この前提を踏まえると、
なるべく、部屋を移動せず、賞金の高い部屋でクリックし続けることが、良い戦略になります。
この場合被験者は、予想通り、賞金の高い部屋を見つけてクリックし続けました。
次に、条件を一つつけ加えました。
・どの扉もクリック12回分のあいだ放っておくと、永遠に消えてしまう。
この条件を加えた時、部屋を移動せず、賞金の高い部屋でクリックし続けるのでしょうか?
もちろんこうはいきませんでした。
部屋が消えないように、高い賞金が出る部屋(例えば赤)から低い賞金の部屋(例えば黄色)へ扉が消えないように移動するようになったのです。
面白いのは価値がないあるいは低いとわかっているものでも、離したくないと思ってしまうところです。
恋愛で例えるなら、好き度は低いけど、好きっていってくれてるからキープしとこみたいな感じです。
もちろんですが、私はそんなことしません。
だからといって、全ての選択肢をなくせと言いたいわけではありません。
確かに選択肢を残しておくことは大事です。
問題なのはいらない選択肢も捨てられないことです。
このような時はどうしたら良いのでしょうか?
それは、「決断しないことによる影響」を考えることです。
迷って迷って結局判断が遅れた経験はありませんか?
AのカメラにするかBのカメラを選ぶかを迷っている間に、撮れるはずだった写真を逃してしまうのです。
予測の効果
予測のおかげで私たちは喜びを増加させることができています。
わかりやすいのが、ディズニーに行く日にちまでのカウントダウンがディズニーに行った時の満足感を高めてくれるのです。
私もこの期待感が重要だと学生時代に実感しました。
私はディズニーがとても好きなので、人生で一番はしゃいる場所だあと思います。
そんなディズニーに大学2年の夏休みの終わりに行きました。
ディズニーに行こうと友達と決めたとのは行く日の前日でした。
夏休みの思い出にどこか行こうとなり、ディズニーに行くことになりました。
私としてはハッピーだったのですが、前日に学外研修に行っていたこともあり、ディズニーに行った車で13時から15時まで爆睡してました。
もちろん疲れもあると思いますが、今までこんなことはありませんでした。
期待感の重要性を実感した瞬間でした。
これは、私だけに起こる現象ではありません。
神経科学者の一団──サム・マクルーア、リ・ジャン、デイモン・トムリン、キム・サイパート、ラタネ・モンタギュー、リード・モンタギュー──が、目隠しと非目隠しでコカ・コーラとペプシコーラの味覚テストをおこなった。このテストに現代的な趣向を添えたのは、機能的磁気共鳴画像(fMRI)装置だ。この装置で、実験協力者がコーラを飲んでいるときの脳の活動をモニターできる。
結果はどうだったか。コカ・コーラとペプシの「チャレンジ」と一致するように、実験協力者の脳の活動は、飲み物の名前がわかっているかどうかでちがっていた。つまりこういうことだ。コカ・コーラなりペプシなりが口に流れこむと、感情的な絆を強く感じることにかかわる脳の内側の部分──腹内側前頭前野(VMPFC)と呼ばれる──が刺激される。しかし、コカ・コーラが口に流れこんでくるとわかっているときは、ほかのことも起きる。この場合、脳の前方部分──背外側前頭前野(DLPFC)と呼ばれる、作動記憶、連想、高次認知、高次観念などの人間の高次脳機能にかかわる領域──も活発になる。ペプシでも活発になったが、コカ・コーラのほうが反応が強かった(そして、当然、コカ・コーラを強く好む人のほうが反応が強かった)。
ダン アリエリー. 予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (Japanese Edition) (p.265, 266). Kindle 版.
コカ・コーラの期待感がこのような反応を引き起こしているのです。
期待感を与えることで私たちは満足度を高めることができるのです。
例えば、人に期待をしない方が良い。期待すると裏切られるからと言われたこと言ったことありませんか?
確かに、期待をして裏切られた時のショックはあるでしょう。
しかし、期待をかけないと喜びも得られることはないのです。
リスクだと思っていたことが意外とリスクではないかもしれませんね。
本当のリスクは何にも期待しないことでしょう。
まとめ
私たち人間が未完成で不合理な生き物かご理解いただけたでしょうか?
・不合理だから、予測できない。
・マーケティングに活かせない。
ということはありません。
私たちは予想どおりに不合理なのです。
そう、予測できるのです。
あなたの選択が合理的なものになると嬉しいです。
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